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自然農法とは

1.今、注目する背景

世界人口が80億人を超え、世界のあちこちで紛争が日常化する今、持続可能な社会を考える際にまず最初に考えるのは食べ物のことではないでしょうか。

「毎日健康な食事ができる。」こと

当たり前のように思われますが、どうなのでしょうか。

我が国の農業の憲法とも言われる今年5月に食料・農業・農村基本法が改訂されました。主な変更点は「食料の安全保障」が明確に謳われたことです。この改定と関連して「みどりの食料システム法」(環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律)が同年6月に施行されました。

この背景には近代農業、特に日本の農業が依存してきた化学肥料原料が世界的な紛争の影響もあり高騰し、また将来的に入手が困難になると予想されているからです。

出典:農水省 みどりの食料システム戦略(参考資料)

上のグラフのように化学肥料の三大要素のNPK(窒素、リン酸、カリウム)の原料である尿素、リン酸アンモニウム、塩化カリウムの全てほとんど輸入に頼っています。しかも、これらの原料は世界的に偏った地域に分布していて、日本はそれらを数か国に依存しているのが現状です。これらの原料はもちろん有限な資源であり、経済的な埋蔵量はリン酸、カリウムのどちらも約300年程度(出典:農水省資料肥料をめぐる現状)ありますが、すでに原料国はこれらの限りある原料の輸出を戦略的に行う動きが出てきています。

2.化学肥料に依存しない農業

このような現状、将来像を見据えて、政府はみどりの食料システム戦略(みどり戦略)において2050年までに有機農業の全耕作面積に占める割合を20%にする(現在は0.7% 出典:農業新聞2024 8/30)ことを目標にし、化学肥料の削減を前提とした補助金を設定始めています。

3. なぜ有機農業は普及していないのか

上記のように日本の有機農業の農地は全体の0.7%しかありません。欧州は約9%あります。(出典:東北大学 石 井 圭 一 2023 6月) なぜこれほど低いのでしょうか。いくつか理由はあると思いますが、機械化を前提とした低価格の化学肥料を使用した生産システムが確立してことが大きいと思います。しかし、この機械化の前提となる燃料価格と化学肥料の価格が高騰し継続することが予想される今、このシステムが食料生産の大きなリスクとなるので、政府は食料の安全保障の観点からこれらの輸入資源に依存しない農業の選択しの1つとしてを確立しようとしています。しかし、有機農産物は化学肥料は使わず、健康によいイメージもありますが、一般に除草、害虫対策などて手間がかかり、店頭での販売価格も通常の野菜に比べると高いのが現状です。これが消費の観点から有機農産物の普及が進まない大きな原因です。

3.自然農法とは

。みなさん自然農法という農法を聞いたことがありますか。ユーチューブでは、これに類する「自然農」「自然栽培」などのチャンネルが多く存在しますが、今回はこれらの源流ともいうべき、福岡正信氏が確立した「自然農法」に関して紹介したいと思います。

自然農法の原則は「耕さない、雑草も抜かない、農薬も化学肥料も与えない」ことです。

一般的な農業は4つすべてをかなりの費用と労力と時間をかけて行っていることを考えるとまったく逆の発想で常識では考えられないと感じると思います。しかし、視点を変えて、森を見てみると、だれも耕したり、雑草を抜いたり、農薬や化学肥料を使ていないのに大きな木がたくさん育っています。(実際に上のビデオで紹介される福岡さんの農園は森のような状況になっています。)

4.自然農法の経済性
1)収益性

仮に自然農法が実践可能だとした場合の、従来の農法(慣行農法)と単純な経済性の比較をしてみたいと思います。

慣行農法における主な支出:農業機械購入費の返済金、化学肥料代、農薬代、除草にかかる労務費

理論的には自然農法は上記の費用がいっさい掛かりません。

種さえ手に入り、それを持続的に増やすことができれば、お金をかけずに継続できます。

また、自然農法で作った作物の販売を考え、その利益を計算すると

利益の計算式は

利益=売上-費用

ですので、理論的には自然農法で作った作物を販売すればすべて利益となります。(もちろん実践の際にはそう簡単ではありません。)

2)時間的豊かさ

もう一つ自然農法の経済的なメリットは、環境が整い手法が確立されれば種まきと収穫以外は作業は行わないので、年に数か月働くのみとなり、慣行農法、他の有機農法に比べると圧倒的に時間的余裕が産まれる。

5.飢餓対策

世界の人口の約1割にあたる8億人が飢餓状態にあると言われています。(出典:農水省ホームページ

緊急時には食料支援も必要ですが、慢性的な飢餓に対しての食料支援は、援助を受ける人々の生産意欲を失わせる、援助に依存する仕組みを提供することにもなりかねません。しかしこれらの人々のために必要最低限の土地が用意でき、自然農法を習得し実践できれば継続的に自立した生活ができるようになります。