
国情報
地域:アジア
面積:330,803km2(66位)
人口:34,706,198人(43位)
主な農産物:アブラヤシの実、コメ、鶏肉、鶏卵
お祭りの踊り
研修コース
JICA 持続可能な食料システム戦略による地場産業振興コース 2024(JICA 帯広)
研修員名:ハキムさん
所属先:農業食料省
研修時に作成したハキムさんのビジョン
「マレーシアを将来世代のために経済成長と社会的公平性と環境保護のバランスがとれた持続的な農業と食料システムの確立された国にする」
研修後の活動紹介 (2025年1月現在)
1.農業食料省のビジョンの絵が描かれる
日本での研修の戦略の講座の最初に将来何を目指すのかを明確にするために参加者それぞれに「ビジョンの絵」を描く演習をします。(関連記事 ビジョンの絵を描こう)
この演習は帰国後、所属組織の関係者と所属先のビジョンを描くための練習として行います。
ハキムさんは帰国後、この取り組みを組織内で共有しました。その後農業省の全員が参加して農業省のビジョンの絵が描かれました。
ビジョンの絵は組織の代表がひとりで描くのではなく、係わる全員が参加して1つの絵を描くことで、「みんなのビジョンであり私のビジョン」になる好事例です。

ビジョンステイトメント
“Leading the transformation processes in the agricultural sector in a planned, integrated, and comprehensive manner, based on the mobilization of the entire organization’s thinking and efforts towards achieving the goals of the National Agrofood Policy.”
日本語訳
「国の農業食料政策の目標達成のため、組織全体の思考と努力の動員を基盤とし、計画化、統合化、包括化された手法で農業分野の変革過程を主導して行く。」

2.アブラヤシ農園での林間放牧プロジェクト
研修での持続可能な酪農およびパーマカルチャーの手法の1つである林間放牧(Slivopasture)の手法の講義を応用し、マレーシアにおいて農業において以下の2つの分野の大きな課題の解決を目指すパイロットプロジェクトです。
1)畜産:マレーシアにおいて需要が増えつつある食肉の需要に応えるためには、国内に十分な草地がないことが課題であり、輸入飼料の依存することで収益性に課題があり、産業としての魅力に欠け、若年層に対するアピールができず、畜産農家が高齢化している。
2)アブラヤシ生産:アブラヤシから抽出されるパームオイルの85%がインドネシア、マレーシアの2か国で生産されている。この生産拡大に伴う、熱帯雨林の伐採が世界的に問題視されている
そこで、この2つを統合し、「アブラヤシの農園内で牛を放牧する」という革新的なプロジェクトを立案しました。帰国後このプロジェクトが正式の省のプロジェクトとして実行されることになりました。
3.プロジェクトの持続可能性
このプロジェクトで以下のような持続性の3要素(環境、社会、経済)の効果が期待されます。
1)環境改善の効果
・新たな牛の放牧地が森林伐採をせずに確保でき、森林保護に繋がる
・農園内に自然に撒かれる牛の糞尿がたい肥となり、化学肥料の使用が減少し、土地の肥沃度が増す
2)社会向上の効果
・この林間放牧により、生産費が削減されることで収益性と労働時間が短縮されることで、地域の若年層が主体性を持って携わることで地域の社会、経済の循環が期待できる。
3)経済的効果
アブラヤシ農園内の草を牛が行うことで、除草のための農薬、人件費が削減される。
・牛の餌代が削減でき、放牧することで牛の健康が向上し、輸入する化学肥料の削減に繋がり、事業の持続性が向上する
・農薬、化学肥料を削減した環境にやさしいアブラヤシが生産でき、土地の肥沃度が増すことで木の寿命の長期化が期待できる。

アブラヤシ農園に牛がくつろいでいる姿は想像したこともありませんでした。革新的な持続可能な取り組みとしてこのパイロットプロジェクトとしてアドバイスを継続し継続的な協力をしたいと思います。