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感染爆発が起きる前に

今までであれば、感染が急拡大したタイミングで緊急事態宣言が発令されると2週間程度の間に感染者数は徐々に減少に転じました。しかし今回は、減少しないばかりか、飛躍的に増加しています。(東京の感染者数の推移 NHK)

なんとなく、今回は今までと様子が違うと感じている人も多いのではないでしょうか。ではどのように今回は以前と異なるのでしょうか。

ウイルス感染のように複数の要素が相互に関連する複雑な事例(複雑系)の全体像を把握するには、「システム思考」が活用できます。

以前に新型コロナウイルス感染状況と緊急事態宣言の関係をシステム思考の因果ループ図で説明しました。(新型コロナウイルスとシステム思考 参照)今回の東京を対象とした緊急時代宣言後の感染者数が急増する状況は明らかに以前とは異なります。何が原因でこのような状況になっているのでしょう。改めて「システム思考」を使い今回の状況を把握してみたいと思います。

NHKの調べによると、東京都の数か所の人の動きを見ると緊急事態宣言後の多少減少しています。にもかかわらず急激に増加しています。

なぜ、感染者数が急増しているのか。

以下のように今回の事例を因果ループ図に表すと、緊急事態宣言による外出による人の流れの割合の変化を示す人流減少率と感染した人が他の人に移す確率である感染率の関係により、感染者数が推移することが分かります。緊急事態宣言の発令により人流が増加していないにも関わらず、感染者数が右したのグラフのように時間経過に伴い、飛躍的に増加しているということは、一人の感染者からの感染率が大幅に増加していると予想されます。最新の米国疾病予防管理センター(CDC)の正式なレポートでも、COVID19のデルタ株はワクチンを接種した人でも感染すると他の人に移してしまうことが報告されています。

感染爆発(オーバーシュート)の条件

複数の要因が関係したシステムにおいて、以下の3つの条件が満たされると常に「オーバーシュート」します。オーバーシュートはある要因がシステムが対応できる範囲をはるかに超える数に上昇することです。

  • 急激な数の上昇が見られる。
  • システムを正常に働かせるための上限がある。
  • 上限を超えるとの認識の遅れ、または不適切な対応

今回のコロナウイルス感染においては、以下の条件になります。

  • 既に緊急事態宣言下での今までとは異なる急激な感染者数の上昇が見られる。
  • 病床数の上限がある。
  • 上記の状況への認識の遅れ、または不適切な対応

今回の新型コロナウイルスのオーバーシュートは病院の対応能力を超え、患者の数が増え歯止めが利かなくなる状況です。その後、システムは崩壊してしまいます。海外で既に発生している感染爆発と呼ばれる恐ろしい状況です。

感染爆発を避けるために

システムの特徴の1つとして「遅れ」があります。今回の新型コロナウイルスに関しては感染後から発症までの潜伏期間が約2週間と言われています。現在の感染者数は2週間前の感染者数字ということです。感染者が飛躍的に増加している際には感染爆発するかどうかは、この状況をすぐに認識し、適切な対応いち早くがとれるかどうかです。

気が付いた私たち市民がいち早く、お互いに協力しこれまで以上に移動、他の人との接触を抑えることが唯一の方法です。今の時期であれば夏休み期間の外出は控える、お盆の帰省はしない。日々の外出の回数もこれまでよりも減らすことです。

飛躍的な増加をもたらすシステムにおいて対応が遅れれば遅れるほど、危機を回避する確率が減少します。

デルタ株は今までのコロナウイルスとは異なるウイルスとの認識し、感染状況が新たな段階に入ったこと理解し、この機会に皆で協力してオーバーシュートを避ける経験をしましょう。