親の因果がひ孫の代にまで報いる。
不必要な成長、行いを抑制する。
原則2,3は、正のフィードバックによる成長・開発の支援について関する項目でしたが、健全なシステムであっても、耐え難い要因を生みシステムに損傷を与えることがあります。原則4「 自制心を働かせ、フィードバックを受け入れる。 」では、パーマカルチャーデザインの自律的な面である不必要な成長を抑制すること、およびその習慣について扱います。
自然界におけるバランスを考慮した捕食
自然界において捕食動物はバランスを維持し、狩りを行い、社会においては法律の効力で抑制され、システムにダメージを与える場合には罰を与えます。この負のフィードバックはすべてのシステムの健康とバランスを維持するために必要です。
植物ギルドと動物との関係
パーマカルチャーのデザイナー目標は調和のとれた、自律性のある植物ギルドと動物との関係を創造し、草取りなどの仕事を減らすことです。この調和のとれた植物ギルドを作るためには、均衡点を崩す間引きが必要となります。これは負のフィードバックを受け入れることです。我々は負のフィードバックを悪いものととらえがちですが、これは私たちのバランスを欠いた文化を反映しています。
聖なる杯(得難い理想)
自己保全、自己抑制のシステムはパーマカルチャーにおいて「聖なる杯」と例えられるかもしれません。なぜなら、それは理想であり、それを求めて努力しても完全に実現することがないかもしれないからです。統合と多様性の原則(原則8と原則10)を適用し、さらにすべての要素の自律性とエネルギーー効率も大切にし実現をめざすので、長い道のりを歩むことになります。それぞれが自律した要素で構成されたシステムは環境のかく乱にも強さを発揮します。人工繁殖したものでなく、丈夫な、半野生種で自己増殖可能な植物、動物を使うことはパーマカルチャーの古典的な戦略であり、この原則を示すものです。
自立した要素とシステムによる回復力の増強
かつて強く、独立した国は自立した大規模な農民に支えられていました。現代のグローバル経済は不安定性を増大し、世界中に伝播させています。社会におけるそれぞれの要素とシステムのレベルの再構築をすることで、回復力を増強することができます。来るべき省エネルギー社会での継続的で高いレベルの生産資源の減少と規模の経済と専業化の縮小により、自律性はより価値のある能力となります。
親の因果がひ孫の代にまで報いる。
伝統的な社会において、負の外部に対するフィードバックの影響は多くの場合、ゆっくりと現れることを認識されています。そこで人々は「親の因果がひ孫の代にまで報いる。」や「カルマの法則」として警告や言い伝えを大切にしています。現代社会においては、私たちの欲求を満たすために大規模な、遠隔のシステムに重度に依存することを当然とする一方で、外部からの規制なしに、高い自由度を期待しています。我々の社会全体が、まるで後先考えずに「ほしいものはすべて今欲しい。」と言うティーンエージャーのようです。
自然からの負のフィードバックに耳を澄ます。
環境保護主義における1つの課題は過剰な開発を防ぐために自然からのフィードバック信号にもっと同調するための習慣と文化の獲得です。負のフィードバックとは絞り込まれ、修正するのに十分な強さで、システムの発展にさらなる大きなダメージを与えるほどは強くない要因を指します。この負のフィードバックからの警告を率直に許容し、行動を抑制することは、倫理観に基づき行われ、そして私たち、家族、地域社会(この順位で)で優先的に適用されるべきです。この規制は貨幣経済における政府まかせではいけません。
地球は自己制御するシステムである。
ガイア理論の「地球は自己制御するシステムである。」は1つの生命体として地球全体を理想的な形にするためのもので、今回紹介した原則4を具体的に示すものです。数百万年にも及ぶ地球が恒常性(外部環境によらず一定の状態を保とうとすること)を持つという科学的証拠は地球全体が自己制御するシステムの原型であることを示すものであり、それにより進化が起こり、地球を構成する生命体やサブシステムの継続性を促しています。
出典:Essence of Permaculture by David Holmgren